春麗らかに、桐と鶴は美しく

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数分後 着替え終わった蒼髪の子は言われたとおりに厨房にやってきた 「ん、来たね」 そういって仕込みの作業だろう それをいったん止めて手招きする女店長 それに習い歩を進める 「と言うわけで、今日から働いてくれる子、言ってたでしょアンタ」 蒼髪の子の肩に手を置きながら一緒に作業してた男性の前に立つ 優しく微笑みながら男性は 「君か、鶴子から聞いてるよ。はじめまして雨宮桐人と言います、よろしくね」 「よ、よろしくおねがいします」 強張りながら差し出された手を握る あったかかった、焼けて溶けそうな位に不愉快だった 自分には不釣合いな暖かさだから 懐かしいぬくもりだった 握手を終わらせ料理長は問いかける 「さて、これから一緒に仕事するんだけどね」 「はい」 「一人暮らし?」 「そうです…自炊もしてます」 「なるほど、基本的にあまり変わらないよ、レシピ通りにやってもらえればそれで良いしね」 「わかりました」 「あ、水場大丈夫?」 「平気です」 「そうか…なら仕込み一緒にしようか、うん、よかった」 一息で問答、最後に微笑みながら料理長は言う 其処に疑問を感じた蒼髪の子は問い返す 「よかった…?」 「今まで厨房は僕だけだったからね、忙しいときは鶴子が来てくれるけど…」 「最近忙しくなってきたからねぇ、助かるわ本当」 夫婦そろってお礼を言われた 「まだ何もしてません、よ」 「いやいや、きっと大丈夫だろうと思ってるからね。それに手を見ればわかるよ」 「…手?」 言われて自分の掌を見つめる、何がわかると言うのか 少なくとも自分にはわからない 「まあ、個人的な感覚だけどね」 微笑みながら言う、料理長はどこか楽しそうに どこか悲しそうに 「じゃあ一緒に仕込みをしよう、改めてよろしくね」 その言葉に 「よろしく、お願いします」 ああきっと気を使ってるんだなと 蒼髪の子は理解した
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