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3月、出会いと別れの春の内、別れの時。
春風が吹き、桜が色づき始めた頃にあの子は帰ってきた。
春風ですら溶かせぬ心を患って、あの子は帰ってきた。
なんて事はない、ただの田舎町。
山に囲まれ海を眺める、そんなありふれた土地。
後ろに山を背負い、海を眼前に控える下手したら旅館と間違えそうな大きな家。
そこに独り、あの子は帰ってきた。
特徴的な外見。
空色の鮮やかな蒼い髪。
海のように深く涼やかな碧い瞳。
一様国籍は日本人。
何のためにとか、その時は知らなかった。
あの子の苦しみも何もかも。
凍った心に何もかも閉じ込めて
あの子はこの町に帰ってきた…
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