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「そういえば、そろそろ毎年恒例の山開きだな。」
次の日の朝に、隼人は呟いた。
「山開き?って何ですか?」
美奈が首を傾げた。
「一種のお祭りみたいなもんでさ、一週間の間、この村はお祭り騒ぎって訳さ。他の村の人達も来るんだよ。」
隼人が説明した。
「楽しそうですね。具体的に、どういうような事をやるんですか?」
「そうだなぁ。屋台で、焼き鳥とか焼きそばとか、美奈が好きそうな綺麗なガラス細工もある。すっげぇ綺麗なんだ。甘いわたあめとか水飴もある。」
「うわぁ。凄い楽しみになってきました。」
美奈は、満面の笑みを浮かべて目を輝かせている。
「毎年この村で祭が開かれるから、他の村人を俺達の家に泊めてあげるんだ。」
隼人は美奈の笑顔を喜んでいる。
「私達の家にも、泊めてあげるんですよね?」
美奈が聞いた。
「あぁ。野宿何てしてもらうわけにはいかないし、わざわざこの村まで来て貰うんだ。こちらが、おもてなしぐらいはしないと。」
隼人が言った。
「そっか。まぁ、そうですよね。ごめんなさい。変な事聞いて。」
美奈が、少し残念そうにしている様子が伺える。
「?どうしたんだ?」
隼人は不意に聞いた。
「いえ。一週間のお祭りに、二人きりでいたいなぁって考えていたんですよ。」
美奈が、少し赤くなり、小さく微笑む。
隼人も、少々赤くなるが、美奈を抱き寄せた。
「んじゃ、もてなしはするけど、外出でお祭りに行くときは、一緒に出よう。」
隼人は美奈の耳元で囁いた。
「よろしくお願いしますね。約束ですよ?」
美奈は、隼人に抱きついた。
隼人は優しく抱きとめて微笑んだ。
「…そうだ。美奈、ちょっと来てくれないか?」
隼人が、何かを思い付いたのか、美奈の手を引く、
「どうしたんですか?急に。」
美奈は、手を引かれながら聞いた。
隼人は優しく微笑み、いつもの寝床につくと、タンスを一つ一つ開け初め、何かを探し始めた。
「何を、探してるんですか?」
背を向けている隼人に美奈が聞いてみた。
「見てのお楽しみさ。」
隼人が返した。
美奈は、首を傾げた。
少しすると、ようやく隼人のお目当てのものが見付かった。
「あったよ。祭りの時にどうかなって思ったんだけどさ。」
隼人が美奈に有るものを渡した。
「これって。」
美奈は、驚いている。
隼人が美奈に渡したのは、薄い桃色で蝶の刺繍されている、浴衣であった。
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