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『ププーッ!!』
……はっ!!
目の前に赤い車が飛び出した。
私は思わず急ブレーキを踏む。
『キキー!!』
『…ドン!!』
あっ…やっちゃった…
後ろを振り向くとシルバーの普通車からおじさんが面倒くさそうに出て来た。
私は軽く溜め息をついて車の外に出た。
……
少しうとうとしていた私が悪いのもあったが、時間がないので簡単に名刺を交換して、示談で済ませた。
…全くついてない
時計を見ると11時を超えている。
今日は会社で大切なミーティングがあるというのに…
覚悟を決めて会社に電話を入れる。
「桜井ですが…ちょっと事故してしまって…ごめんなさい遅れます。」
会社にはその1時間後についた、板垣所長は笑いながら
「今日は桜井がランチおごりなぁ」
といたずらっぽく笑う。
「ええ~マジですかぁ?」
「桜井さん、昨日も遅刻だったから仕方ないね。」
トイレから出て来た谷口くんにそう言われる。
そう…昨日はつい寝坊して遅刻してしまった…しかも40分も…返す言葉がない…
「はい…じゃあおごらせて頂きますぅ…」
「やった!!」
所長と谷口くんが嬉しそうに笑う。
なんだか、嫌な感じがしないから不思議だ。
私の通勤する会社は人材派遣の小さな会社で、私の住む田舎町から国道を通って約1時間以上かかる。
地方にしてはまだ都会の街の真ん中に位置する。
常に会社にいるまだ30代前半の若い所長と同じく若い20代の谷口くん、出入りする派遣社員の人達も年齢はさまざまだが、20代~30代が多く、皆仲良く活気あるアットホームな感じの職場だ。
でも最近、仕事が増えて、残業も多くなり、はっきりいって忙しい。
昨日も結局帰宅したのは夜中11時すぎだった。
職場の雰囲気は良かったが、正直私は体力がついていかなくなってきていた。
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