第11章 帰郷

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「真由に、言われたよ。僕がここを出たのは、父さんに認めてもらいたかっただけなんだって。絵を焼かれたことに腹をたてたのではなく、分かってもらえなかったことが悲しかったからなんだって。そう言われて僕は、涙が出たよ。言われるまでは気付かなかった。あんなに憎くて辛かった気持ちが、いつの間にか消えていたよ。僕をここまで連れてきてくれたのは、真由なんだ。だから…今は、憎んでなんかいない。むしろ、謝りたいよ」 アベルは穏やかに微笑んでそう言いながらきつく目を閉じた。涼子は涙ぐみながら頷いてアベルの隣に座り、 「お帰りなさい、アベル。あなたも、変わったわ。強くなったのね」 と言って抱きしめた。アベルはそんな涼子を優しく抱きしめると、 「…ただ今、母さん。悲しませて、ごめん」 と言うと、涼子はさらに涙が溢れてきて、二人は泣きながら暫くそうして抱き合っていた。 やっと、帰ってこれたんだな…。 アベルはそう思うと、切ない気持ちと真由への感謝の気持ちが溢れて止まらなかった。 * 深夜2時頃。 真由は、疲れたのか、ぐっすり眠っていた。そこにドアがゆっくり開いて、ある影が忍びこんできた。ユラユラ揺れて、影は真由のベッドへと向かい、やがてベッドに倒れ込むと、真由の体に当たり真由はそこで目を覚ました。 「ア、アベル??」 暗闇の中に誰かがいる。
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