11.嵐の前の騒がしさ

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が、間髪入れずに、責めるような一言。 「もっとも、『前は良くて今はダメなの?』って、少し抗議したくもあるんだけどね」 「…済まない」 今回こそは出てもらおう、というだけではない。 風の便りに聞いたクラスマッチの様子が、彼の想像より、だいぶ荒っぽかったからだ。 「…お父さん」 「ん?」 ふすまに手をかけ、振り向いた葛西が言う。 「お父さんが"心配してる"通り」 「………」 「私は…神崎君のことが好き」 「…そうか」 「でも大丈夫だよ!」 やけに明るい声に、晴十郎は顔を上げられずにはいられなかった。 「神崎君は良い人だから」 「…そうか」 簡単で、この上無くまっすぐな言葉に、彼は先程と同じ返事を返す。 「…じゃあ行くね。待ってると思うし」 「む…ああ」 晴十郎の応答を聞いた葛西は、寝室を後にした。 途端に静寂が訪れる。 「………」 目を閉じる彼の胸に、幼き日の葛西のセリフが去来する。 『晴海ね、大きくなったら、お父さんのおよめさんになる!』 それを聞き、感動のあまり泣いてしまったのは、余談。 (当然と言えば当然か…) 晴十郎は、けっこう落ち込んでいた。 いわゆる親バカなのである、彼は。
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