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プロローグ~告白は厳かに~
深夜2時、親父に大切な話があると呼ばれ道場に来た俺はじっと親父の言葉を待っている。
静寂の中、対面する俺と親父。
高校卒業を目前に控え、何か大切な訓示を頂くのかとも思い、親父を見つめる。
老いたなと、ふと考えついた。親父に、代々伝わる心創権現流(しんそうごんげんりゅう)を叩き込まれてきた18年、親父が組み手を避けるようになってもうどれくらいか。
幼い頃に見上げた親父は、一回りも、二回りも大きく感じたものだった。
静寂の中、薄明かりの下で見る親父は、なぜだかと手も小さく見えた。
「息子よ、お前に大切な話がある」
「はい。」
いよいよかと、背筋を張り言葉を待つ。
「うむ、平安の世より続く我が塚守家。わしが家督を継いでからもう随分になる…」
老いを感じていたのは、親父も同じだったのだろう。高校の卒業を節目に家督を譲られる、ぐっと自分の方に何かがのし掛かる感じがして俺は身震いした。
「息子よ、父はこの家を潰してしまった…。」
つうっと、親父の頬を涙がつたう。
「はっ!?」
理解が出来なかった。
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