一之幕

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 晴明の家からは以外と近くに、藤原道長の屋敷はある。    「やれやれ、道長様のお屋敷も久方ぶりだな。」  最近では、もっぱら息子達に任せきりで、内裏にも、出仕しなくなった。  『何故出仕せなんだ?晴明。』  最後に内裏を訪れた時、御主人(おかみ(帝の事))から、問われた。  晴明が黙っていると、御主人は、扇をパチリと音をたてて閉じ、人払いをして改めて聞いてきた。  『………晴明。これで、私とお前しか居らぬ。……そんなにこの内裏が気に入らぬか?』  その問いに晴明は、溜め息混じりに答えを出す。  『否。私が内裏や御主人が気に入らぬ事はありませぬ。その回りの貴族が気に入らぬだけでございます。』  晴明の辛辣な答えに御主人は、寂しげに笑った。
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