一之幕

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一之幕

   『女の肉は柔かい。まして、それが童女ならばなおさらなっ!!』         黒い塊の妖(あやかし)が、真っ赤な口を開けて、目の前にいる、童女を食らう。        「美味いか?」  『ああ、美味い。』  ………今まで食べた中で一番美味だ。  「そうか。」  ………なんだ?おかしいぞ?俺はダレと会話している?  『こんなに美味い肉は初めてだ。』  オレはどうして、答えてる?  「それは良かったな。………ところでお前。自分の足はどうした?」  足……?  妖は、言われて視線を自分の足に落とす。そこには、ポッカリと何も無く、赤い液体が滴り落ちていた。  『足がっ!俺の足がっ!』  「良かったな。……美味かったんだろ?」  ……美味い?……じゃあ、あの肉はっ?!  妖は、顔を上げると初めて会話をしていた相手の顔を見た。        月夜の光りに照らされしその容貌は、妖達の中では知らぬモノが居らぬ程の有名人だった。         『お前は……安部晴明っっ!!』         妖の叫びに晴明は答える。     『お前ごときが、俺様の名を呼ぶなよ?』        妖は、晴明の笑みを見た瞬間、自分の最後を覚った。
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