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「ロウのバカッ」
泣きそうな声でランステッドは呟いた。
「ご、ごめん」
ゲームセンターに到着してから、目的のものはすぐに見つかった。
しかし、一つだけ問題が発生した。
人形の在処が、クレーンゲームだったのである。
純粋な趣味の問題もあるが、主に金銭面で『ゲーム』という代物から程遠い生活をしてきた彼らだ。
いきなりやって結果が出るはずもなく。
幾度挑戦しても結局取れず、財布に君臨していた数人のお偉いさんは全て天に召された。
「で、でも楽しかったでしょ?」
あまりの嫌な空気にロウレニスは苦し紛れに尋ねた。
しかし、聞いてからランステッドはクマの人形が欲しくてやっていたのだ、それが取れなければ楽しいはずがない。
言ってから後悔し、この後の自分の末路を想像し、ため息を吐くロウレニスだったが、予想に反してランステッドは。
「た、楽しかったけどさ」
と呟き俯いてしまった。
「どうしたの?」と尋ねるが、彼女はぬいぐるみを抱いたまま何も答えてはくれなかった。
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