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私にはひかりが穂村先生に呼ばれた理由がわかっていた。
だってこの時期……きっとアレだ。
そして少しだけどうでもいい。
先生ごめん。
まあひかりには言わないでいよう。ひかりは絶対喜ぶからその方が楽しいし。
私達は校舎から出て、先生の『いつもの場所』へ向かう。
真夏の太陽が火を吐く怪獣みたいにギラギラと照りつける下、今日も運動部のみんなは楽しそうに暴れ回ってる。
中には変わった練習をしている人も。
「サッカー部!ドリブルしながら俺達に敵う訳ないだろ!?」
「いいから協力しろ陸上部!」
「俺は日本一のリベロになるんだ!テニスのサーブくらいレシーブ出来るようになってやる!!」
あちこちから聞こえるみんなの声。
どこのスポ根漫画だよ、って突っ込みたくなるけどそんな事してたらきりが無い。
私達が住むこの街は「夢咲市」。
当然の様にキャッチコピーは
『夢が咲く街、夢咲市』
そして
『人は無力ではない、夢力のかたまりだ』
ベタベタだけど、でもこれがなんと伊達じゃない。不思議と夢多き人がたくさん住む、まさに夢の力のかたまりの様な街。
スポーツ選手、タレント、作家、ミュージシャン……
田舎なのにこの街出身の有名人はやたらと多い。
そして私達が通うここは、その名も夢咲市立夢咲中学校だもん。
もうしつこいくらい夢咲きまくり、夢満開。
野球部サッカー部剣道部陸上部から美術部文芸部写真部まで、全国でもそこそこ有名。
「今日こそスカイラ〇ハリケーンを完成させるぜ!」
「サッカー部に負けるな!〇リーグボール3号の完成はまだか!?」
待って、どっちも危険だからやめてお願い。
いつも思う。
どうしてこの街に私は生まれたんだろう?
いや、実はこの街出身じゃないのかも?
だって……
「危ないっ!」
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