夕日

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『夕日って、切なくなるよね。胸が締め付けられるみたい…』 夕日を左手に眺めながら、言葉通り切なく笑いかけた。 車窓から流れる風景を切り取った夕日の景色は、刻一刻とその表情を変えてみせる。 電車内は空いていて、僕たちの会話を聞かれることはないだろう。 『君が友達でホントによかったよ』 また弱々しい笑顔を見せて、微笑みかけた 普段は空元気に振る舞っている彼女。 ひとつの恋が終わったことなど微塵も感じさせなかった。 クラスメートや彼女に好意を寄せる男さえも、気付いた者など誰もいないだろう。 電車で会ったのは偶然なんかじゃない 『も、大丈夫だよ!気遣わせちゃったね。明日から頑張らなきゃ』 そう言って、左手で作ったピースを見せ、いつもの笑顔を作った。 地平線に下弦のかかった夕日は紅を増し、赤の濃い橙が僕の目をくらませた。 夕日を左手に眺める彼女を、逆光で直視出来なかったが、 彼女の目には、多くの悲哀の雫が湛えられていた。 夕日と重なった彼女の姿はとても美しかった。 。
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