3551人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
取り乱しながら奈桜に食ってかかろうとする伊藤さんの前に、今度は商品明細の伝票がおりてくる。
品番、商品名の後に続く請求金額に……
もはやウサギは開いた口すら塞げぬまま人形のように固まっていた。
奈桜は、するするとテレビの前に引き返し翔哉とのバトルを再開する。
「ちぃぃ。止められなきゃコマンド決まってたのにぃぃ。」
「いちじゅーひゃくせん…………け……桁、間違うとんちゃうねんか……」
「一括支払いで引き落としは来月です。
……サボってる場合じゃなさそうですよ?」
伊藤さんは突き付けられた事実に慌てて立ち上がる。
このままいくと。
来月の生計が成り立たない事を察したから。
「もぅアカン!奈桜はんワシを残業ヅケで殺す気か!?この鬼!茶オニ!奈桜はんのデベソーッッ!!」
「残業なんてあんのかよ……あ。あ――――ッ!!」
「うをっしゃ――――!!」
バタバタと本業へ戻るべく和室を飛び出していく伊藤さんの捨て台詞は、翔哉の必殺技発動により掻き消された。
彼は去り際に盛り上がっている奈桜の背中を睨み付けると、着ぐるみを着込んで古書堂を飛び出していく。
いらぬ借金背負わされるし正体もバレた。
年齢もバレたし……名前もバレた。
(最悪や……1番知られとぅな……。)
着ぐるみに篭り寂れた路地を駆け抜けながら、伊藤さんはフト考える。
まだ……翔哉に知られるよりはマシだったかなと。
(神様……コレがもしもあんさんのおかげなら……)
翔哉にバレていたら、たぶん奈桜にもあのピンク頭にも一斉に広がっていただろう。
明らかにお口が軽はずみなっぽい彼だ。
下手すりゃテレビにでも売り飛ばされかねないが……
(どうせなら……もぉぉぉちぃと気ィ使うてくれや……。)
せめて……せめてクレジット支払いをナシの方向で……。
Next→
★★★ dear World ② ★★★
最初のコメントを投稿しよう!