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からん、と音をたてて氷が溶けていく。
喫茶店の一角だけ切り離されたような空間に、私とあなたがいる。
白、黒、灰。
あれ、なんて言うんだっけ?
「ねえ」
思い出した、無彩色。
こんな例え、おかしいかもしれないけど。
「聞いてる?」
「うん」
聞いてないわけじゃないの。聞きたくないだけ。
あなたのいつも笑っていた顔も、その大きな手も。好きな服、好きな本、好きなもの全部、そのアイスコーヒーだって。
「別れよう」
なにもかもが、色褪せて。
あなたがこの空間から出ていったら、もう、
「う、ん」
それでも、私は何も言えない。
鮮やかじゃなくてもいいと思った。一色だけあれば、
でも、でも、
例えばあなたが有彩色だとして、私にとっての色だとしたら。
あなたがいなくなったら、世界はどうなる?
有彩色がなくなったら、残された無彩色はどうすればいい?
ねえ、教えて。
鮮やかな色を失ったパレットで、何が描けるっていうの。
「じゃあ、」
ああ、全てが
白 黒 に 。
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