第三夜

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この鍵束の中に食堂から繋がる扉が開くかも知れない。 そう考え、 「早紀!暴れるな。絶対に出してやるから、大人しくしてるんだ」 そうたしなめるように言うと、早紀は不安気に 「本当…?」 涙混じりに答えた。 早紀には見えないと、頭では分かりながらも俺は深く頷く。 「だから、暫く待っていてくれ。なるべく、早くに戻って来るから」 告げた言葉に更に血がボタボタと勢い良く垂れて来た。 「嫌! 何処に行くの?! 此処にいて!」 悲痛な早紀の声に良心を痛めながらも心を鬼にして、告げる。 「必ず、戻って来るから」 俺はまたそう言うと、複雑な気分になりながら。 言葉を付け足した。 「兵藤の親父さんを……。早紀のパパを連れて、必ず戻って来るから」 その言葉に反応するように。 鳥籠がカシャンと、また僅かに揺れた。 「パパを…?」 また、早紀には見えないと知りつつも、深く頷き──。 誓うように言う。 「ああ。必ず、連れて戻って来るから。少しだけ、我慢して待っていてくれ。必ず、出してあげるから」 「……」 暫く思案するように少し押し黙ってから。 「早く…戻って来てね?」 哀願するように早紀が呟くように言った。 それに必ず──と。 そう、答えて。 俺は地下室から出ると同時に膝を付いた。 余りにも残酷過ぎる……。 涙を堪え。 それでも、段々と感覚が麻痺して来ている自分自身に畏怖の念を抱きながら、俺はまた立ち上がり。 食堂へと向かった。
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