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「じゃあ、俺はこれで」
少し散らかっているデスクにぽんと退職届を置くと、恭介はさっと背を向けた。
「…なあ仙堂、考え直さんか?お前は他の奴等より飲み込みが早いし、ゆくゆくはいいポストにつけるぞ?それなりの給料ももらえるんだぞ?」
デスクに肘をつきながら、店長は恭介をなんとか引き留めようとする。
が、恭介の胸中は変わらない。
「店長のご厚意は非常に有り難いです。…ですが、これはもう決めてた事なんで……失礼します」
全てを言い終わる前に、恭介はドアのノブに手をかけた。
「…仙堂、おせっかいかもしれんが、あまりコロコロ仕事変えてても、お前の将来の為にならんぞ?」
引き留める事を諦めた店長は、負け惜しみじみた言葉を恭介に投げかけた。
しかし、恭介の表情はほとんど変わらない。
「…ふっ…店長…タバコ…ちょっと控えた方がいいですよ…では」
少し毒気の混じった言葉と笑みを残し、恭介はそそくさと部屋を後にした。
「…なんなんだ、アイツは…」
店長は無意識に恭介の言葉を重く受け止めたのか、灰皿にタバコを押し付けた。
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