変わってしまった自分

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 それはとある学校の昼下がり。  今日も太陽が照り、夏の蒸し暑さを存分に伝えている。うちの学校は進学校であり、一応教室にクーラーはついている。それなのにこの暑さはなんだろう。溶けてしまいそうなくらい暑い。異常気象でも起きてるのだろうか。  まあ実際は、ただそのクーラーが壊れているだけなのだが。  僕は机に突っ伏しながら、顔だけを横に向ける。視線の先には女生徒が二人。  この暑さに負けじ劣らずのハイテンションで、何やら雑談している。 「ほら見て! ジェネシスのコンサートのチケット」 「えっマジで!? 見せて見せて。いいなぁ~私も行きたい~」  何処にでもありそうなミーハーな会話だ。欲しかったライブチケットが手に入り、自慢している。そんな所だろうか。  そしてそんなミーハーな会話に、深いため息をつく少年がいた。というか、僕だった。 「ハァ~本当にそんなんに行きたいのかなぁ?」  そのため息はまるで全てを諦めたような、かなり重いため息だ。きっと周りからはそう見えているだろう。誰も見てないけど。  いや、一人だけ忘れていた。 「何ため息ついてんだぁ駿一!? 楽しく行こうぜ!」  背中が思い切り叩かれる。向こうからしたら軽いつもりだろうが、相当痛い。  僕は無言で身もだえる。 「なぁ駿一!おいったら…」  こいつは自分のしでかしたことをまだ分かっていない。ずっと僕の耳元で喋り続けている。  武田啓介。それがこいつの名前だ。  身長は百八十センチを越え、野球部に所属。鍛え上げられた肉体は、片手で僕を吊り上げれるぐらいだ。  しかしオツムがついて行ってないので、そのガタイで僕を叩けばどうなるかが想像できてない  毎日うっとうしいぐらい元気で……(というかうっとうしい)今も暑苦しい笑顔をこっちに向けている、一応親友と言える仲である。
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