プレゼントはいらない。

2/31
75人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
満員電車 揺れる車内 隣の人の肩があたる こちらを向いて頭を下げる 気まずそうなサラリーマン     (疲れた顔してるな…) 窓ガラスに写りこむ自分の顔 遠くに見える街の灯り     埋まる吊革 下を向く人達 顔を上げ、網棚の上に置かれた雑誌に目をやる。     (今日はクリスマスか…)     疲れた顔のサラリーマンで埋まる車内 その中、幸せそうに微笑むカップルの姿。     羨ましくはない… (俺にもあんな時あったな…) そんな懐かしさが沸き上がるだけ     思い返す、少しだけ昔の自分… 社会人になる少し前の自分 何も考えずに居た学生時代 忙しい毎日に追われる前の自分。       軋むレールの音 流れるアナウンス ドアの向こうの景色が次第にゆっくり流れていく。   響くブレーキ音 揺れる車内 開くドアの向こう、一歩足を踏み出した。    
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!