プロローグ

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プロローグ

少女は一人 熟れた小麦畑の中を走っていた。 青空の下に横たわる黄金色の大地はより広大に感じさせる。 ふわふわと揺れる金髪は景色にまけないほど輝きながらなびいていた。 彼女にとってこの季節は一番のお気に入りだった。 はっきりと理由を持っているわけではない。 収穫の季節は何か生命の圧力を体中にうけるようで、肌に感じる空気が気持ちよかった。 走っても走っても疲れを感じない。 何の目的もなく走りたくて仕方がなかった。 少女はふと後ろから何かが追ってくるような気がして立ち止まりふりかえってみた。 瞬間、 頭の上を光り輝く巨大な存在が飛びこえていった。 はっきり見ることはできないほど一瞬のうちに頭上をすぎていったが、炎の塊のようで大きな鳥のような印象を残した。 その存在は何か尾をひくような残像を残しながら、小さな森の中へ吸い込まれるように消えていった。
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