だから…

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たった一言〔行きなさい〕とだけ言った後、魔法陣へと光を放つエリシアに、ミリィは「お母様…」と感謝を込めて呟き、エリシアが放っていた光と重なるように、ミリィは魔法陣の内側から光を放つ。 母と娘が放つ光が、徐々にレザリアスの魔法陣にヒビを作っていく。 〔エリシア! お前…、今何をしてるのか分かっているのか! レザリアス様が言われた事を忘れたのか! 『人間とドラゴンは一緒にはなれない!』お前も納得していただろう! それを、母親のお前が破らせてどうするん…〕 〔アンタも手伝いなさい!〕 未だにエリシアの行動が理解できず、エリシアを説得しようとするクラシルに対して、エリシアは手伝うように言ってくる。 クラシルは、エリシアに手伝えと言われて、言葉に詰まってしまう。 それでもクラシルは、何とかエリシアを落ち着かせようとしているのだろう。 〔エリシア〕と呼び掛けるが、エリシアは答える代わりに火球を出現させ、低く唸り声をあげた。 〔ウッ…〕とたじろいで、クラシルは一歩下がるが、手伝おうとはしない。 出来ないでいるのだ…。 クラシルにとって、レザリアスは絶対的な君主であり、唯一クラシルが尊敬する存在だ。 そのレザリアスに刃向かう事など、出来るはずがない。 クラシルは、どうすれば良いのか分からず、エリシアとミリィそして、レザリアスへと視線をさまよわせた。 そんなクラシルに、エリシアは更に話し掛ける。 〔アンタ…、トウヤに約束したんでしょう? 『娘を悲しませない』って…約束したんじゃないの? なら、エルフォミリアにとって、何が本当に幸せな事なのかを考えなさいよ! この子は、自分であの人間の隣に居るって選んだのよ。 それなら、親としてしてやれる事は1つよ!〕 言葉の端々に、怒りと「約束も守れないのか?」と言う思いを込めたエリシアの声に、クラシルは無言のまま俯き、両目をキツく閉じた。 そのまま、クラシルは動かないのではとエリシアが思い始めた時だった…。 〔レザリアス様! 申し訳ありません!〕 心からの謝罪を叫び、クラシルもミリィの魔法陣目掛けて光を放ったのだ。 ミリィは、クラシルに何と言葉を掛けて良いのか分からず「お父様…」と小さく声を漏らす。 〔エルフォミリア…。 たまには、我も父親らしい事をしなければな。〕 声を震わせながらも、クラシルはそれだけ呟き、不器用に微笑むのだった。
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