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風見市という中規模都市の郊外に、中学校・高校・大学を一貫の学校がある。
まわりが焦げ茶色い煉瓦のような塀で囲まれ、小さなビルのような大きな塔が六棟ほど建っている。
校内の中心部にも大きな建物が建っており、どことなくヨーロッパの城を連想させる。もしくは、要塞のような感じもする。
この学校の裏に行けば、さほど高くはない崖がある。崖の下には青く綺麗な海水がどこまでも広がっている。
日本国内でもトップクラスの広大さを誇る学校の前に立つ一人の少年はその門下から中を見渡していた。
顔立ちはキリッとしていてさわやかな印象……とは程遠い。
何というか、可愛げがなくなる程度に大人びた感じだ。そして、特に手を加えられた形跡の無い地味な髪と一週間ほどバケツの中に放置されて死んでしまった魚のような目をしている。
まさに、おしゃれという言葉と敵対する存在である。
名を海兎 練(かいと れん)と言う。
彼はダルそうに歩を進め、学校の中心部にある職員室に向かった。
しばらく歩くとドアの上の札を見て立ち止まる。そして、小さなため息を吐き出し、ドアを開ける。
中には少数の教師しかいなかった。今は授業時間だからだろう。もっとも、練が狙って来たからだが。
「教頭先生はいらっしゃいますか?」
練が訊ねると男の若い教師が、窓際にいる頭部が焼け野原のような円形脱毛症の冴えないおっさんを指差し「あちらです」と言った。
「海兎です」
サラリーマンと言ったほうがしっくりくるような男は笑顔で練を見た。
「おお、久しぶりだね! 元気かい?」
彼と練は初対面だ。仕事の関係で話が耳に入ってくることはお互いにあったが直接会うのは初めて。
話を合わせて頷くと、部屋中に聞こえるぐらいの声量しゃべりだした。それが故意であることに練は感付いている。
「知り合いの息子で、明日ここに入学する海兎君です。よし、久しぶりに話しでもしようか」
それだけ言うとおっさんは、腕を回して練の肩を押しながら職員室を後にする。
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