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第一部 第一章
昨夜の雨の名残である水溜りを踏み散らし、野良猫を飛び越え、あるいはポリバケツをなぎ倒しつつ、七海郁斗は裏路地を駆けた。
「くそ、どこまで追いかけてくるんだ!」
踏み躙られた水溜りを飛び越え、物陰に逃げ込む野良猫に目もくれず、倒れたポリバケツを蹴り飛ばしながら、緒形玲奈は後を追った。
「ストーカーの如く朝から晩まで付け回して精神が崩壊に至るまで追って行くわよ! 捕まえてあげるから、逃げずにその場で止まって、わんって言いなさい!」
止まれと言われて止まるなら、そもそも逃げていない。
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