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噂をすれば、なんとやら―――‥‥
ちょうどその時、『他の奴ら』がやってきた。
「すまんち!遅れてもうた」
久松喜代馬と、岡本八之助だ。
「先生と話しょうたきに。‥‥誰じゃ?」
相当急いで来たのか、肩で息をしながら弁解がましくそう言った久松は、顔をあげて初めて遼香に気付く。
「ほら、岡田さんのあれですよ。柳生遼香さん」
「あー、噂の。噂には聞いちゅう。強いがゆーてな」
そうかそうか、と久松は遼香の背中をバシバシと叩いた。
されるがままになっている遼香は、久松の後ろに座りこんでいる岡本に話しかける。
「あの‥‥」
大丈夫ですか?
きっと睨まれて、その言葉は飲み込んだ。
てか、何で睨まれないといけないんだ!
「ほっといた方が良か。体力ないだけじゃき、だらしなか」
「情けないんだ」
「そうはっきり言わんでも‥‥」
久松、遼香、森田、それぞれの発言は、ぐさぐさっと岡本の心に突き刺さるものが含まれていた。
「後で、殺、す‥‥」
「あんたが殺すのは、佐一郎」
彼は地を這うようなおぞましい声を出そうとするものの、息切れしながらだとさすがに恐ろしさはこもってない。
ひとつも恐くない言葉を正論で返したのはもちろん遼香だ。
「あんたらが早く来ないから、あたしまで駆り出されちゃったよ」
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