地獄への始まり

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「お父さんと最後にどこ行きたい?」と母は言った。 父と母は離婚をする。 7歳の私はまだ離婚の意味がわからなかった。 でも母から 「お父さんはもう帰ってこないの」 と聞かされた時は、すごく悲しくてたくさん泣いた事は覚えている。 お父さんと最後に行ったのは遊園地だった。 4歳年下の妹 優子はずっとお父さんに抱っこされていて、私は我慢していた。 お父さんと母は普通に笑って会話をしていた。 「お父さんがもう帰ってこないなんて、ケンカをしたから言っちゃったんだ」 と、その時の私は思っていた。 次の日からお父さんは帰ってこなかった。 それから母は夜仕事を始めた。 私と優子が夕飯を食べてると、母は化粧をし真っ赤な口紅と香水をつけて「いってきます」と言う。 私と優子はベランダから母の姿をずっと見ていた。姿が見えなくなるとハイヒールの音を耳をすませて聞いていた。 夜中母はふらふらになりながら帰ってくる。 洋服を脱ぐといろんな所にお金が挟まっていた。
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