「トビタツ」

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 「トビタツ」

わたしの翼は七色だと 誰かが言った たたんだ翼を 広げてごらんといった 生まれて一度も 空を飛んだこともないわたし 鳥だとは知らなかったから 窓辺に立ったことはあるけれど あまりに空が蒼すぎて あまりに太陽が朱色で わたしは 自分の姿さえ見えなくなりました そうして また 部屋の隅 籠の中 静かで 穏やかで そして 退屈な世界 けれど あなたがわたしに触れたとき わたしは命の場所を知り 私は翼を見たのです 今は もう ここにいない あなたは私の色にいる いま わたしは 蒼にも 朱にも 負けない 輝きをもち 翼を広げ ようやくに あなたへと あなたへと むかひます
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