初めての都会

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「初めましてね、百合瀬君。私はここで理事長兼学園長をしている鳳凰院 楓(ほうおういん かえで)って言うの。悪いけど、皆の前では学園長って呼んでくれると嬉しいわ」 学園長は笑みを崩さず皇に語りかける。 学園長なんだぁ……って、へ? が、学園長? って、ええ! 今まで完全に見とれていた皇だが、バネ仕掛けの玩具ばりに後ろに飛び上がる。 なんで学園長が? 僕は学園長に呼び出される事、してしまったのでしょうか。 身体中から悪い汗が吹き出てくるが、悪い事ではない事を祈り学園長に話しかける。 「あの……なんで、僕が呼ばれたのでしょうか。学園長先生」 恐る恐る皇が質問すると、学園長は笑みを深める。 「それはこれからじっくり説明するわ。大丈夫、私が出来る限り分かりやすくして説明してあげる。でも……」 学園長は前髪を掻き上げ、やや背を屈めて皇の視線に合わせて瞳を覗く。 その仕草一つ一つにどぎまぎしながらも、皇も学園長の淡い蒼の瞳を覗き込む。 よく吸い込まれるような瞳、というのを聞くが、学園長に宿っている瞳はそんな生易しいものではない。 もっと深い――吸い込むのではなく、表すなら海のように全てを受け止める要素と、嵐の攻撃的な要素という矛盾したものが入り交じった瞳だった。 「百合瀬君、今なら引き返せるわ。この話しをしたら君はもう、今までの『普通』とはおさらばなの。それでも……聞きたい?」 学園長の瞳は急に憂いを帯びた。 怖い それが、皇が最初に頭に浮かんだ言葉だった。 いきなりのこんな急展開でこの言葉。ここで『普通』ならもちろん、選択するのは『引き返す』だ。 けれど、皇は興味を持ってしまった。 好奇心か下心か、はたまた気まぐれかも解らないが、彼女の瞳の奥の『普通』ではない何かに、強い、強い関心を持ってしまった。 どちらを選んでも、後に強く後悔することが分かっている自分。 今、自分が考えていることは軽率と言われても仕方ないし、実際そうだろう。 でも 「……よろしく、お願いします」 皇は自分の耳を疑った。 学園長はさらに笑みを深め、一息置いて話し始めた。 「受理したわ、百合瀬 皇君。私は君を歓迎します。この世界でも有数の、魔術を授業に取り入れた学舎……その中でも特に影響力のある学舎として、魔導師育成機関として有名な学園――『神獣・魔術学園 フューチャー』へ!」
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