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一匹のトンボが悠々と教室に入ってきた。集中しているのかレノアスは頭にトンボが乗っても気づく様子がない。
教室の入り口で赤みのかかった茶色の髪をした女の子が静かにその光景を見て微笑んでいた。
(あれ気づいてないんだよね?……むしろ私にも気づいてないよね?)
女の子は気配を消したような気になって、そっとレノアスの後ろに周り込み、トンボに手を伸ばす。
「……!!ッ」
ガタッという効果音とともにレノアスが振り返ってしまう。
レノアスが気配に反応したと同時にトンボは空に帰ってしまい、女の子の手が空をつかんだ。
「あ゛ぁ、逃げちゃったじゃん!」
ペシペシとレノアスの頭を叩く少女
「ちょっ?やめろよ一番手!」
両腕で頭をガードするレノアス
「その呼び方やめてって言ってんでしょー」
少女の攻撃力が二倍になる。
「ごめんなさーい。これあげるから許してー」
レノアスは涙声でポケットからあめを引っ張り出した。
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