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次の日もディナーを共にする約束をしその晩はお互いに自室に戻り睡眠を取った。
それからというもの、毎晩のディナーが楽しみだった。
時に共感し、時にぶつかり合う。お互いを高めあえると実感できた。
ある夜、私は彼にこんな質問をしてみた。
『もしも、自分を犠牲にしなければ他人を助けれない。そんな状況になったらどうする?』と。
『もちろん相手によって答えは違うだろうから、この場合は見知らぬ子供だとする』と付け加えた。
すると、金子はたいして悩みもせずこう答えた。
「もちろん助けるね」
『なぜ?君は世界的に有名な富豪だ。世界的にみても君が亡くなる方が損失が大きくはないかい?』
「僕は十分に今幸せだ。しかし、もう十分に生きた。子供にはまだ幸せになる権利があるが果たせてはいない。子供の幸せになる権利を守れるなら僕の命なんて安いものさ」
『俺はそうは思わないな。間違いなく自分を生かす。なにより自分が大切だからな。俺たちの生きている世界じゃ、そんな甘い考え方してたら足元すくわれるぞ』
「そっか。まぁ人の考え方はそれぞれだからね」
金子は少し寂しそうな顔をしてそうつぶやいた。
『ま、仮定の話だしな。お互い天寿をしっかりまっとうしようぜ。』
自分から聞いた話だが、少し気まずい空気が流れた事もあり、話を切り上げた。
他の話をしても気まずくなるかと思ったが、杞憂だった。
気まずくなる事無く、有意義に過ごす事が出来た。
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