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だからこそ、神官は慌てた。
マザーというのは王族が魔力によって科学の物体に生命を与えた思考型疑似生命体である。
感情はないが、機械の持つ情報保存量と処理能力に自ら考える思考力が備わっていた。
その大きさは二メートルほど。
壁と半同化した人型をしていた。
神官はマザーの眠る部屋へ向かった。
機械でもあるので不眠不休に近く働けないこともないが、二つと作れない緻密な作りと故障すると暴走しかねないので、王族か神官が問いかけなければ目を覚まさないように魔法がかけられていた。
部屋に着くと神官は目覚めの呪文を唱えた。
『我に何を問いかける?』
マザーが言った。
「マザーよ、最後の王族が死に絶えた。この世界が滅びないように統治するにはどうしたらよい?」
『しばし、待たれよ』
マザーは言った。
今までの記録にはこの様な事態になったことは残ってない。
多分、世界始まってからの緊急事態である。
記録にないことを答えるのは容易くない。
マザーの沈黙はしばらく続いた。
それを神官はマザーの思考力にかけるしかなかった。
人間に思い付かないことをマザーなら考えられるかもしれないからだ。
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