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ワインのように赤い液体と、かき氷シロップのように緑の液体。それぞれが入った試験管を、両手に持っている。
「これでいいんだよな……?」
答えてくれる者は誰も居ない。
放課後の実験室には彼一人しか居ないのだから。
頼れるのは教科書の記述と、己の勘のみ。
「ええい!やっつけろ!」
気合い一発。
二つの液体を一つのビーカーに流し入れる。
「どうだ?」
液体は縦に渦を巻くように混ざり合あっている。
本来ならここで無色に変わるはずだが。
「あー……。こりゃまずいかね?」
二つの液体は無色になることはなく濁った色になり、ふつふつと沸騰したお湯のように泡を立て、そして――
ボンッ!
という音と共に煙を上げた。
「……どんまい」
ぱたぱたと手で煙を扇ぎつつ、塚越優一(つかこし ゆういち)は呟いた。
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