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その日 俺は、少し苛々しながら仕事をしていた。
せっかくのイブだってのに 昨日のちょっとしたミスのせいで、俺だけ休日出勤になったのだ。
――ちきしょう…なんでいつも俺だけなんだよ!?
本当は、恋人の詩織とデートの約束をしていたのに…。
何ヶ月も前から予約していたレストランも昨日キャンセルした。
当然 詩織の機嫌も悪く、苛ついていた俺は昨夜遅くに来た里奈からのメールの事など すっかり忘れていた。
――なんだっけな?なんだか訳わからんメールだったけど…
里奈は、詩織の姉で俺は少し前まで付き合っていた。
里奈に別れを切り出した時、俺は恐る恐る詩織の事が好きになったと言ったのだが、予想に反して里奈は
『やっぱりぃ?あたしもそんな気ぃしたんだ。詩織ちゃんには叶わないから…いいよ、わかった。あたしも隆とはそろそろかなって思ってたんだぁ』
と 屈託の無い笑顔で 俺にこう言った。
だから俺は、まるで気にしてなかった。
その何日か前に、里奈から もしかしたら妊娠したかも と言われてた事さえ すっかり忘れていた。
先週 里奈からメールが来るまで里奈の存在すら すっかり忘れていたのだ。
詩織とは姉妹だが、別々のマンションに住み、たいして仲も良くないらしく、詩織の口から里奈の話しを聞く事もなかったし。
先週の里奈のメールは…クリスマスイブに 俺に前に買っておいたクリスマスプレゼントを渡したい…
そう書いてあった。
正直 俺は ウザかった。
今さら 別れた女からクリスマスプレゼントなんて貰いたくなかったし
それに…里奈は気付いてなかったが、俺は詩織と里奈の両方と三ヶ月程 付き合っていたのだ。
その間 里奈には かなり冷たい態度をとっていたから、なんとなく里奈に会うのが 後ろめたかった。
が、そんな里奈が なんだか可哀相になり
『じゃあ 行くよ
里奈のマンションに昼ごろで いぃかな
オレ 夜 出かけるからさ』
と、こんなメールを送ってしまった。
そしてやっぱり後悔したから、昨夜の里奈のメールも どうせ確認のメールだろうとロクに読まずに消してしまった。
でも もうすぐ昼になる…里奈は 待っているだろうか。
絶対 待っている、里奈は、そういう女だ、いつも飼い犬のように俺の言う事に従っていた女だから。
俺は
『今日は やっぱり行かない』
それだけ書いてメールを送った。
本当は 仕事だからって書いたのに なんだか苛々して消してしまったんだ。
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