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誰も居ない校舎の中に響く
鼻歌とスリッパの音。
いつもは生徒の声で溢れているのに、何も聞こえない。
不思議な感じがする。
誰も居ないというだけで何故かワクワクして、特別な存在になった気分になる。
自分だけ、皆と違う事をしているからだろうか。
辺りをキョロキョロと見渡しながら、職員室の前に立つと扉を勢いよく開けた。
ターン!と良い音を立てながら扉は全開になった。
中にいた教師は
驚いて固まっている。
この顔が見たかった…のかもしれない。開けた本人は、ニヤニヤと笑っている。
「…お前は、相変わらず騒がしいヤツだなっ!」
一人の教師、生活指導をしている榊 正義【サカキ マサヨシ】が呆れた顔をしながら、扉に立っている男に近付いた。
榊は生活指導をしているだけあって生徒には厳しく、恐れられいる。因みに見かけも恐い。
だが今は
笑顔で話し掛けている。
「元気だったか?まかさお前が青葉に戻って来るとは思わなかったぞ」
「榊先生も、変わらず元気そうですね」
しっかりと握手をかわすと、榊は職員室の奥にある来客用のソファに招いた。
促されるまま、そこに座ると榊も対面に腰を下ろした。
職員室の窓から見えた桜は、蕾が開きかけている。これから美しく咲きほこるだろう。
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