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──そう…。
何故かあの犯人逮捕の後、錦里は事件を解決した名刑事として、世間から注目を浴びるようになってしまった。
まぁ、常識的に考えて、あの状況で、高校生の男の子が犯人を突き止めて、その犯人をぶっ倒した……だなんて、誰も思わないだろう。
傍に倒れている刑事が事件を解決し、犯人と揉合っているうちに突き飛ばされて怪我を負った。
そうして犯人も、その拍子に壁に打ちつけられ、気を失った。
そう考えるのが妥当だろう。
錦里は、自分の鼻のギプスを手で軽く触る。
しかし実際、自分が請け負ったのは、この鼻の骨折オンリーなのだ。
事件など、まるっきり解決していない。
ただ、あの少年に導かれるままついて行ったら、偶然 犯人逮捕に立ち会った、というだけなのだ。
自分が崇められる理由はない。
しかし、錦里はそれを周りの者には決して打ち開けなかった。
そんなことをしたら、あの少年はきっと、無駄に注目を浴びる事になる。
彼はきっと迷惑するだろう。
何だかそういうことを、心底 嫌っているみたいだったから。
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