たからもの

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(ねえ、何してるの?) 辺り一面草原の場所で僕は寝転んでいた。 これはいつものこと、いつもの夢。 気がつけば僕はここにいて、すぐ近くに彼女がいる。 月夜に照らされた彼女はどこか幻想的で儚く、消えてしまいそうに見えた。 風が吹くたびに腰まで届く彼女の髪と白いワンピースがゆれる。 まるでその姿は黒い翼を持った天使のようだ。 (別に何もしてないよ) もう何度目のセリフかわからない、いつもの問い掛けに対するいつもの答え。 そう言って上半身をあげようとしている僕を押し戻すかのように突然風が吹いた。 (きゃっ!?) 風に舞う彼女の長い髪の毛。 彼女は風に対して逆の方向を向き、僕は目を閉じた。 数秒後、風は止み僕が目を開けると彼女の姿はどこにもなかった。 辺りはいつの間にか夕日の差し込む病室だった。 「よかった。また会えた。」 夢の中でしか会えない彼女。 彼女は一ヶ月前の新婚旅行中に僕と一緒に事故にあった。 僕は重症だったけど助かった。でも彼女は・・・。 それ以来夢を見るたびにいつも草原で会う彼女。 事故にあったことが嘘だったかのようにそこに彼女がいて僕がいる。 たった一言交わすだけで目が覚めてしまうけど・・・。 けどその時間が僕のたからもの。
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