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ダウンライトがほのかに照らす店内。
キリスト教をモチーフにした絵画や美術品がぼんやりと浮かび上がる。
バーの客は一人だった。
近くのクラブに勤める36歳のバツイチの女で、
今日は赤いドレス風の服を着て、
化粧はファンデーションが厚めで若く見せる努力が感じられた。
この女は、
最近の常連で3年前に康永が妻と死別したと知って、
足しげく通ってくるようになった。
康永は、この女の仕事の愚痴や前の旦那がいかにひどい男だったかの話しをおだやかな表情で聞きながら一定の距離感を保っていた。
今日も、康永の一人娘10歳になる【琴】ちゃんに会いたいと迫る女を、適当にかわしながら彼女の好む甘いジュースのようなカクテルを作っているところだった。
奇妙な違和感を感じ(侵入者警戒のために店の入口への階段に取り付けてあるカメラの)モニターに目をやると、二人の怪しげな男が写し出された。
『!!』
明らかに怪しい雰囲気を醸し出している二人。
『こいつらが【悪魔】か!?』
客の手前、平静を装いながらも明らかに人間とは異質な形容しがたい様子に、
震える指でオートロックの機能を付けた店の出入口の扉の施錠ボタンを押した。
しかし鍵は閉まった途端にすぐさまカチリと開き、
細身の白い顔をした男が、
何事もなかったかのように扉を開けて入ってきた。
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