私が還る時

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子供は私が引き取る事で話し合いがついた。勿論、養育費は子供が成人するまで払う事になっている。 これから全く新しい生活が始まる訳だが、はっきり言って幸せな生活など期待していない。子供がいることは当然幸せに思う。しかし今状況を考えた時、何よりも生活に対しての不安が幸せより先にきてしまうのだ。恐らくこの不安はしばらく取り除かれないだろう。 ――‐…‥ 私は満足に息子と話す事は出来なかった。朝から夜遅くまでパートで家にはいない。その間息子は家に一人になってしまう。息子とのすれ違いの生活が更に私を追い込んだ。 いつものように夜遅く帰宅すると珍しく息子は起きていた。 「弘樹まだ起きてたの。」 「うん。明日土曜日だから。お母さんも明日休みでしょ?」 弘樹は笑顔で答えた。久しぶりに見た弘樹の笑顔に私の心は癒された。 「そうよ。お母さんも明日休み。どっか行こうか。」 普段は疲れていてこんな言葉はでないのだが、何故かこの時は息子の笑顔を見ていたいという気持ちではなしていた。 「僕動物園行きたいな。」 「じゃあ動物園行こうか。ほら早く寝ないと寝坊しちゃうよ。」 弘樹はせかせかと自分の部屋へ入っていった。 いつぶりだろう息子と二人で出かけるのは。自分の心に余裕が出来ていた事が不思議だった。あんなにも不安に絶えなまれていたのに。今では自分から楽しみを探していた。 私は自分の還るべき場所を微かにみた気がした。 ~Next Continue~
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