第一章 始まりのお話

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漆黒の大理石の床が広がる建物の中。 辺りは薄暗く暗く静まり返り、建物は炎や雷の共演により焼け焦げ、爆発や衝撃によりあちこち崩れ落ちている。 当初は立派な王が住むに相応しい、王宮の大広間を思わせる程の気品漂う美術品や装飾が並んでいた。埃一つない鮮やかな赤絨毯が敷かれ、見る者の目を奪う素晴らしさであった。 だがそれは、今ではもう見る影もない。美術品や装飾等粉々に砕け、高熱により溶けている物もある。床は血で汚れ、異臭が漂う。 崩れたことによりできた穴から、紫に染まる空が見える。暗く雲が広がり風や雷が狂い荒れていて、まるでこの世の終わりのよう。 息をするのが苦しい…… 体が痛い…… 血が止まらない…… 腕が上がらない…… 魔力もアイテムも尽きた…… もう何時間経ったのだろうか。魔王との最終決戦。数千もの剣撃、数百もの魔術。それは全て強大な敵を討つ為の死を宿す牙。 手を抜くはずもない全力の一撃。お互いが消耗していくのは必然。精神と体力はもはや風前の燭。 激闘のさなか仲間の剣士はその命を散らし、魔術師は魔王の破壊の力により倒れた。今意識を保っているのは勇者と僧侶しかいない。 二人とも呼吸するのも辛く、傷だらけで立ってるのがやっとといった様子。 しかし、死力を尽した勇者パーティーの猛攻で、目の前にいる魔王も立ってるのがやっとのようだ。かつては存在するだけで恐ろしい程の畏怖を与えてくる姿は今はもうない。 威厳を漂わせていた龍の姿をした魔王の巨大な羽は切り裂かれ、体も魔術で焼け落ち、砕かれ、裂傷させられている。 その身に刻まれた生々しい傷痕から、夥しい血の涙を流し続け、辺りの床に朱の水溜まりを作り出していた。 攻撃に移らない……否、移れない所を見ると、魔王の方も息も絶え絶えといった所だろう。
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