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僕は、王。
数多の試煉を蹂躙し、数多の者を淘汰し、
僕は孤高の頂点を極めた。
孤独の凱歌が僕をさらなる境地へと高めていく。
僕は、王。
一体誰が僕の影を踏めようか。
一体誰が僕を見(まみ)えようか。
僕は、王。
或る日、僕に友が出来た。
飛び切り頭脳の優れた、よき理解者であった。
僕は、孤独ではなくなった。
僕は、王。
或る日、僕に恋人が出来た。
飛び切り愛くるしく、心の居所であった。
僕は、凱歌が要らなくなった。
僕は、王。
僕は頂点ではなくなった。
其れは、何故?
大切なものを愛する事への、尊さを知ったから。
大切なものを失うことへの、恐怖を知ったから。
僕は、王。
けれども、寸分たりとも後悔はしない。
きっと僕は、世で最弱の王。
僕は強さを差し出し、弱さを手に入れた。
僕は、王。
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