blue blue sky

7/15
3930人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
負けたくない。 マウンドの上で齋藤は強くそう思った。 甲子園には俺達が行く。 何度も誓った決意をもう一度確認する。 誰よりも練習した。 誰よりも苦しんだ。 誰よりも野球が好きだ。 その俺達以外に誰が甲子園に行くと言うんだ……! 齋藤は鬼山のサインに頷き、ゆったりとフォームに入る。 高い身長と長い手足を生かしたピッチングフォーム。 ずっとこうして投げてきた。甲子園でも。 齋藤のえぐり込むようなシュートに三番の悠はバットを詰まらせて、ショートの真っ正面にボールが転がっていく。 ショートは落ち着いた球捌きで一塁に送球し、スリーアウトになった。 齋藤は溜まっていた物を吐き出すように大きな声を出した。 「打ちがいだけじゃなく投げがいもありそうだな」 ベンチに戻った齋藤は鬼山にそう声をかけられた。 「彼と野球するのは楽しいよ」 「じゃあ俺も楽しんでくるとする」 言葉とは裏腹に鬼山からは殺気にも似た気合いが溢れている。 いや、鬼山だけではない。ベンチにいる全員が同じ雰囲気を持っている。 そして自分も。 甲子園には俺達が行く。 そう言いたくて仕方ないように。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!