“権力への復讐者”の正体

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中村は一同の視線を一身に受け少々戸惑っていたが、手にした書類の様な物を数枚林田に渡した。 「時間が掛かって済まない。でも……君が言った通りだった。しかし、これは誰の事なんだ?」 首を傾げた中村は林田を見たが、林田は拓也へと視線を向けるのみだった。 場の空気を感じ取った中村はいそいそと輪の中に入っていく。 拓也はそれを見届けると口を開いた。 「これで……本当に皆さんが集まりましたね。では、話を続けます。“権力への復讐者”は今回の事件で、二人の人物に関わりました」 拓也はチラッと校長を見やる。 「まず、判りやすい接触の方から話します。昨日の朝、つまり事件が起きた朝、権力への復讐者から校長先生は手紙を机の上に置かれていました。これは……今は山崎先生が持っていますよね?」 「あぁ…」 輪の中から山崎は手に白い紙を持って前へ出る。 拓也はそれを受け取ると、その紙を開き内容を読み上げる。 「《時が流れても我が憎しみは未だ癒えず。復讐の刃は仇を討つ。権力への復讐者》。これで全文ですが、皆さんお分かりになると思います。権力への復讐者が言いたい事、それは……」 「“この学校の教師の中に、十年前若菜さんを殺した人間がいる。そいつを許さない”って事でしょ」 一斉にその言葉の主をその場の全員が注目する。 その人物は秋元愛子だった。
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