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戦闘を終え、息を潜めて海底に横たわってから1時間ほどが経ち、酸素の残量も少なくなった。
山下艦長の命令で中谷が手動で、圧縮空気のバルブをシュル、シュルと開けた。圧縮空気がバラストタンクに充満し海水を吐き出し、流星号はゆっくりと浮上しはじめた。
電波受信可能になり、電波を受信しプリンターからは、命令書がとめどもなく打ち出された。
それには『政府が中国と和平交渉中、攻撃を中止せよ。…磯総司令』と何枚も打ち出された。画面にはせわしく赤いパトランプが回っている。
山下はそれを無視して上部ハッチのハンドルをキュルキュルと回し開けた。朝日の淡く赤い光がハッチから流れてくる。山下はタラップに足を乗せ、ハッチの外の縁に腰掛け、一日ぶりの新鮮な空気を肺に一気に流し込む。
野村もタラップを登り狭いハッチから、顔だけを出す。鼻から空気をスーと吸い込む。全身に新鮮な空気が行き渡る。
中谷は命令書を読んで唖然として動けないでいる。
海上には中国艦隊の姿はなく、無数の空母や潜水艦の残骸と死体が散乱していた。
「自衛隊をもう辞める」と山下は細くつぶやいた。
野村は目を潤ませて、山下を見つめ「私も…」と目で応えた。
次作はロシアの極東艦隊との第二次日本海海戦です。「オホーツクの流星」モバゲーに投稿していますので、閲覧よろしくお願いします。
※ この小説はフィクションであり、下記に記載されている以外は全ての人物、名称、店舗は架空のものです。
この作品は2006年に作成しました。ntaku451101英雄です。著者より。
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