第十二章 粛清

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心は口元を手で隠して笑いながら続けた。 「乞食みたいな格好して帰って来るなんて…。用心深い斎藤さんらしいわ」 思わず自分の姿を見てしまった斎藤。 だがそんなことよりも、斎藤は別の所に驚き、感心していた。 「よく気付いたな。俺が"お市"だと」 心は腰に手をあて、 「確かに土方さんは女性に人気がありますけど…。あの土方さんが人前でのろけるわけがありませんからね。それに、言葉の端々で示唆して楽しんでおられたんですよ?土方さんも私が気付くとは思っていらっしゃらなかったようですが」 あと、と心は続ける。 「一(ハジメ)…、一(イチ)…、市(イチ)…お市。簡単な連想の遊びですもの。土方さんにしては安直過ぎましたね」 【副長…】 少女に駄目を出されていいのか。 斎藤は小さく息を吐いた。
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