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第二章・まやかしの蝶
(一)
どっと現場が騒めく。
警察の人間が容赦なく生徒の群れをかきわける。
「どいた、どいた!」
二人の刑事が美坂の方に近づいてきた。
と同時に、鑑識官が死体や、現場付近の写真を撮り始める。
「えー、おたく、ここの学校の関係者?」
二人の刑事のうち、小柄な男が警察手帳を見せながら、尋ねてくる。
体格と顔つきから、鼠を思わせた。
「ええ、関係者だからここにいるんですよ、刑事さん。」
美坂はニッコリと微笑んだ。
刑事は眉間に皺を寄せたが、続けた。
「……第一発見者は誰かわかるかね?」
「さぁ?この人だかりですからねぇ…。誰が一番最初に見つけたんでしょうねぇ…」
美坂の言葉に橘少年はギョッとした。
「貴様ッ俺をおちょくっとるのか!隠しても調べればすぐにわかるんだぞ!」
鼠男ならぬ、鼠刑事が顔を真っ赤にして怒りだした。
美坂は目を細め、おやおやと呟く。
「まぁまぁ、警部。落ち着いてくださいよ。」
背の高い、どっしりとした体格のもう一人の刑事が鼠刑事を諫める。
どうやら、鼠が警部で、どっしりした方が警部補らしい。
見た目では判断しちゃいけないという事だ。
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