優しき者の

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   水面は揺れる。  心に影を残して。 真っ黒なシミは、ゆらゆら揺れるばかり。 夜の暗闇は突然に。 その目は何を映すだろう。 その目に、私は映っているだろうか。 その異国の瞳は、何を語るか。 覚えるのは、締め付けられる程の胸の痛み。 涙腺の熱くなるばかり。 貴方にこの地は、似つかわしくない。 どうか、自分の地へお帰り。 辛くないところへ。 罵られないところへ。 平和を愛し、正義を貫くことをおすすめしよう。 悲しくないよう、供を連れておいき。 犬でも猫でも鳥でも、私でも。 楽しいところへおいき。 あの日ちいさな私を、 虫の命を救ってくださった貴方よ。 遠い異国の労働者。 心優しい、貴方の安息の地はどこですか。 優しく悲しい、青い瞳よ。 その瞳は何を映す。  
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