名無し 自殺希望者

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「問題ばっかり抱えて、私みたいに弱い人間はドロップアウトしていくことについては?」 彼は一つアクビをした。 「そうですね~。 率直に答えると、いいんじゃないですか? これは冷たい言葉になると思いますが、本人が命を絶つと決めた地点で、誰も救えないんです。 本人が救われる何かを見つける動きや思考をしない限りは、救いなんて伝わらない訳だし。 しかし、問題を抱えるだなんて当たり前の気がしますがね… 生まれた時から今まで問題を抱えていない人はいないでしょうしね。」 彼は腕を組み直し、眉間に皺を一つ寄せた。 「あなたは自殺する人に手を差し伸べた事があるの?」 「ええ、以前一度ありましたよ。 しかし、僕の職業は人の死で成り立っているんですよ… 僕がそこにいるという事は、残念ながら助からないんです。 だから、手を差し伸べる救い方より、死後へ希望を持たす事に重点をおきました。」 なんだか深い話だった。
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