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太陽の位置はまだ低く、朝の爽やかな風が肌に心地いい。
本来ならそう思えるはずの穏やかな空気がすでに台無しだった。
というのも今現在ヴェルガは、全力疾走の真っ最中だったからだ。
「うおッ!危ねぇ!!アイツらしつこすぎるぞ!」
悪態をつきながらヴェルガはツンツンの黒髪を風になびかせ、帝国兵から必死に逃げ回っていた。
「アシュトリア王国は一体何やってんだー!敵国の兵士が国内で暴れているというのに!」
ヴェルガは走る足を休めることなく叫びをあげる。
しかしその叫びは誰にも届かずに風に溶け込んでいく。
なぜならここには逃げている自分達を除けば、3人の帝国兵しかいないからだ。
周りを見渡せばあちこちに朽ち果てた建築物やレンガがあり、かつてはここが街であったことを窺わせる。
つまりここは廃村だった。
アシュトリア王国とノーリ=ネルクロフ帝国は戦争中だ。
しかし今は休戦中。
両国間の移動は制限こそされているものの基本的には自由だ。
つまり敵国の人間がこちら側に居ても何の不自然もない。
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