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日常の朝
けたたましい目覚時計によって俺の眠りは終わりを告げられた。
半ば八つ当たりのように思いっきり叩いて止めると、時計の針が示すのは八時。寝過ごした!と焦るけど、すぐに今日は土曜日だと思い出して一息つく。
平日は学校だとかなんだで六時起きだけど、休日はもっとゆっくりできるんだ。
俺、広江織佳はまだ高校二年生。
所謂家庭の事情とやらで、父母とは同居しないで兄弟だけで広い一戸建てを丸々占領している。まあ、六人いるからそんなに広々って感じじゃないけどな。
皆所謂妾の子供って奴だから、そんな干渉はないから楽と言えば楽だ。家政婦すらいない。
だから、兄弟六人もいるくせに、家事全般は俺と次男の担当になっている。
不条理っていやー不条理なんだけどな、兄弟個々の人格を考えるとむしろ立候補したくなるくらいなのが不思議だ。
そんな訳で、俺は家族の食事を作るために愛しい布団から起き上がる……が。
何者かに阻まれてそれはできなかった。
そう言えば、なんか体が重い。
恐る恐る自分の背を振り返ると……
見たくないものを見てしまった。
見なかったフりしたいけど、無理なんだろうなー……
俺の目に入ったのは、寝癖のせいで普段の整えられた髪型が見る影も無いほどにバサバサな、派手な銀髪。
この時点で誰だか分かってしまった。
家にこんな髪の持ち主は一人しかいない……
「何やってんだ、依織兄!」
そう。
我らが兄弟が誇らないワルい子担当。
三男依織が、何故か俺の腰をしっかり抱えて寝てるんだ。
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