~0.49%~

2/22
320人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
 闇の中だ──。  手を伸ばしても、伸ばしたその手が見えない程の闇……。そんな漆黒の闇の中で、何かが笑っている。 「ククク……」  何者なのか? どこから聞こえてくるのか?  不気味に響く笑い声を聞いていると、恐ろしく不安に駆られてくる。だが頼りになるのは、この笑い声だけだ。  ゆっくり、ゆっくりと足を前に出し、その声のする方へと近付いていく。いや……近付いているのか、遠退いているのか……それさえ分からない。  ただ、何となく──あの声の元へ、辿り着かなくてはならない──そんな気がしていた。  歩かなければ、あの声の元へ。でも……。 “あなたは誰……?”  尋ねても答えが返ってくる事はない。声はただ笑うのみ……。  どこまで行けば辿り着けるのだろう?──ふと、そんな事を考えた時だった。 「娘よ……」 “えっ!?”  声が語り掛けてきた。  上空から、正面から、背後から足元から……。耳元で囁く様に、遠くから叫ぶ様に、愛を謳う恋人の様に、仇敵が呪詛の言葉を唱える様に……男の声が響く。 「肉欲に汚されし、美しき娘よ」  じわりと心に沁み入る声は、熔ける様に拡がり──侵蝕する。 「……いずれ彼の地で見えよう」  
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!