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……ガショ…… ガショ…ガショガショガシッ!! 音が容赦なく、どんどんと近付いてくる。 ここにいたらいずれは、あの鋭い牙を持った恐ろしい奴に、食べられてしまう……。 普通に落ちるのより、はるかに怖い。 今私は、上半身が地面についている。 もしかしたら…助かるかもしれない! 私はひじを踏ん張らせ、少しでも上にあがろうと踏ん張った。 「舞さん、その調子だ! ……頑張れ!」 朝霧さんは持つ手を、私の右手から、両腕ヘと変え、更に引き上げにかかる。 ……バキバキバキッッ! 音が急に変化した。 何かが破壊される様な音だ。 『…グ…ギャアアアアアッ!!』 突如、フロアボスの叫び声がフロア内に響いた。 何が起きたのか? ふと足元を確認する。 バキ…バキバキッッ! ……メキメキメキメキッ!! 心底ゾッとした。 何故なら、ボスが化け物に食われていたのだから。 『ギャアッ…グゥウッッ』 苦しそうな叫び声。 あの仮面も、粉ごなに砕けていた。 ――バクンッ…… そして化け物は、その大きな口を一気に閉める。 ゴクッ……。 ボスを飲み込む音。 ボスは完全に消滅したのだ……。 ガバッ 休む暇もなく、化け物は再度、口を大きく開けた。 次は私…… 恐怖により私の体は、ガチガチに硬直している。 (…駄目だ…体が動かない!) もうどうしようもない。 (嫌だ…怖いっ……!!) 私はとっさに目を瞑る。 …バクンッ!! 化け物は口を大きく閉めた。 ………終わった。 ………。 ……どういうわけか、痛みがまるでない。 不思議に思い私は、恐る恐る目を開けてみる。 (…!) 私は朝霧さんに倒れ込むような形で、地面の上にいた。 ――そう、私の体は間一髪、地面に引き上げられていたのだ。 「ハア……ハア…ハア。 なんとか…間に合った。 ボスが君から離れたおかげで、引き上げれた…よ…」 息を切らしながら、朝霧さんが微笑んでくる。 シュピンッ! 突如閃光が走り、フィールドが元の空間へと戻った。 ……ようやく、スキルチップの魔法効果が終了したのである。
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