Vol.0

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   世界を美しいと思う。 こんな時は。 どうして桜は ピンクなんだろう……? なんて意味不明な自問も、この太い幹の上に広がる花を見ているとマトモに思える。 花びらが風に舞って、まるで絵のように彼女の周りに降った。 ユズノ 柚乃の視界は今、全て桃色の乙女ちっくな色で埋まっている。 他の色など受け入れない。  あー、きれい。気持ちいい。 うっとりと、背中を桜の木に預けながら思った。 「入学式なんて……おちゃのこさいさいだぁ……」 あんまり桜の色香にやられているので、よく分からないことを口走っている。 しかし彼女には、目の前に広がるこの風景の方が偉大だった。 校舎の中庭にズラリと並んで、そのどの枝にも、美しい花々を咲かせている桜の木。 その頭上には、春の暖かい日差しが、あまりに心地よく陽を落としている。 それに照らされて、桜の色は一層 際立ってピンクに透けていた。 「きれぇーすぎる……」 とろけそうな口の回りで、素直すぎる感想を柚乃はこぼした。  
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